■ 未知の素粒子を探る物質科学の挑戦:超伝導、量子液体の物理
物質中の原子・電子集団は、10
23個/cm
3におよぶ超高密度の量子凝縮系であり、予想もつかない様々な現象が出現します。その典型例は、超流動、超伝導、量子液体、金属-絶縁体転移といったマクロな量子現象です。そこでは、多くの素粒子(ヘリウム原子、電子)が一体となった新たな集団運動(素励起)が起こり、粒子が単体で見せる運動法則とはまるで違った量子多体系に特有の運動が現れます。そのような量子集団は、電磁場や温度などの微弱な刺激に対して、多彩な応答(物性)を示します。量子集団の基底状態によって、応答する“準粒子”の性質も異なります。その新しい素粒子を支配するミクロな基本法則について解明するために、私たちは原子核をプローブとして、電子(原子)の運動を原子スケールで観測する研究を行っています。主に核磁気共鳴(NMR)とよばれる技術を用いて、電子のわずかな対称性の破れを逃さずに検出し、ボース・アインシュタイン凝縮、量子スピン液体、量子時間結晶といった新しい現象を探索しています。また、世界でも最先端の精密な角度分解実験、超高圧技術、光検出MRIなどの開発に取り組んでいます。これらの基礎研究は、将来的に新しい高温超伝導体の設計、従来の性能を凌駕する量子コンピュータや医療用MRI(磁気共鳴画像装置)のコア技術へと進展する可能性があります。現在、最大9台のNMR装置を使って、約20名のメンバーで研究を進めています。最先端の量子現象の解明や新しい磁気共鳴装置の開発に興味のある方は、是非一度研究室を訪ねてみてください。